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怠惰で平凡な日常

鬼怒川訪問のすゝめ 其ノ壱

そうだ、鬼怒川へ行こう。

世間はお盆休み。今年もヤツのせいで帰省できなかった私は、友人(通称アニキ)と共に鬼怒川へ向かった。名目はアニキの痛風の湯治のためである。

関東で温泉といえば、熱海、箱根、草津伊香保が挙げられる。恐らくこれらがメイン所だろう。私達は未知の温泉街に思いを馳せた。そんな、旅の備忘録を綴っていこうと思う。

 

アニキの社有車(アクア)を軽快に飛ばし、着いたのは宇都宮。とりあえず県庁所在地で腹を満たす。宇都宮と言えば餃子だ。ふらっと入った餃子屋さんは、メニューはライスと餃子が数種類のみ。なんとも強気なメニュー設定である。肉汁溢れる焼き餃子と鶏ガラが効いた水餃子、香り広がる特製ラー油。私は、そんな魅力的な餃子を心から堪能した。ふと、隣のアニキに視線を傾けると何だか様子がおかしい。ヤツの影響で栃木も、まん延防止が発令され酒類が出せないのだ。餃子と言えばビール。そんな方程式を覆されたことが不満げなようだった。

 

気を取り直して宿へと向かう。再びアクアを飛ばし田舎道を走る。日本の夏の田舎道。気温は熱いが何だか心地よい。それ故か、途中でトラックが横転していたが気にもならなかった。そんな事は栃木では日常風景の一つのように映るのだ。

とうとう宿へと着いた。安宿だが景色だけは一流と言って差し支えなかった。
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チェクイン。ここで対応してくれたのが宿の支配人。今旅の登場人物BIG3の1人である。何だか丁寧に宿の説明をしてくれるが、頭に入らない。なぜなら、二言に一回はダジャレを言っているためである。散歩なのに四歩。最早意味がわからない。これはダジャレなのか?そんな身も蓋もないようなダジャレで私達は混乱してしまった。唯一理解が出来たことは、支配人も痛風であるということだけであった。

 

宿で一息つき、鬼怒川を散策してみる。古き良きスナック等はあるが、開いていない。ここでもヤツの影響の大きさを感じる。恐らくヤツが息絶えた時に訪れると、また違った一面を見ることが出来るだろう。適当な食堂で食事を済ませ、酒屋で酒を買い込む。食堂のババアにずっと話しかけられ、酒屋のジジイはネガティブ。どちらも癖は強い方であったが、BIG3には及ばない。しかし、そんな店員さん達の個性、人間性は田舎ならではの人情味を感じることが出来た。

そうこう言いながら地酒を買い込んだ。

 

宿に戻り、風呂に入る。風呂の感想は特段無い。特筆して優れた点は無い。そこがいいのかもしれない。普遍的な風呂は身構える必要もなく、ただただ度の疲れを癒してくれる。

 

そして、夜が訪れる。ゴングが鳴る。まずはビール。アニキにとっては念願だったであろう。物事には順序があるように、初めはビール。これは大宇宙の普遍法則と言えるだろう。ビールで潤された喉は、次に日本酒を求める。温泉地で日本酒。言うまでもなく極上である。栃木の地酒は辛口で軽快な口当たり、鋭いキレ。これらの要素がペースを加速させ、同時に夏の暑さを置き去りにしていく。気づけば、2本あった4号瓶は虚無となっていた。

2人ともベロベロである。しかし、ここで立ち止まる事が出来る筈がない。陽気に虎舞竜のロードを歌い、煙草をふかせ鬼怒川の街へ繰り出す。東京なら通報案件かもしれない。そんな馬鹿2人をこの街は優しく受け止めてくれた。田舎の温かみを与えてくれる。

コンビニへ辿り着いた2人は満足気に宿へと戻り、買い足した酒を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

朝を迎えた。

そして気付いた。

記憶が無い。

知らない天井を見上げ、次に部屋を見渡す。

荒廃した都会の路地裏のようだ。

強盗か?いや、山賊でもいるのかもしれない。そんな馬鹿な考えを一瞬で薙ぎ払い、考える。

しかし、何が起こったのか分からない。

転がる空き瓶、空き缶、テーブル。飛び散るツマミ。

目の前に広がる光景を見ても何も分からない。

恐ろしいことに、アニキも何が起こったのか分からないとの事だった。

そんな馬鹿2人の鬼怒川訪問記は2日目へと突入する。失われた記憶を取り戻すために...

 

                                                           ……To be continued